昔、血液型によって人事上の決定をするという企業が、実際にあったそうで す。例えば、「□型の人はこの部署に」とか「△型の人は採用しない」とか。 デートなどでの話題としては、無難なところですが、就職活動に関係すると なると、笑い事ではありません。 |
まず、医学的常識。 人間の性格が脳によって形作られるという論には、反論はありませんよね。 血液循環系と脳細胞との間には、直接の交流はありません。両者の間には、 “血液脳関門”と呼ばれる関所があり、血液が脳細胞に触れることは、許され ていないのです。 ※ 栄養素(主としてブドウ糖)や酸素の供給は、“グリア細胞”と呼ばれる 細胞の仲介により行なわれます。 ABO式血液型の形質を決定するのは、主として、赤血球の表面に存在する 抗原と、血漿に存在する抗体です。両者とも、血液脳関門を通過することはで きません。 従って、脳細胞には、少なくともABO式血液型は存在しないのです。 ABO式血液型が存在しない脳によって形作られる性格がABO式血液型に よって支配されるなんて、あり得ませんね。 ※ この項の記述について、さときん様より、「血液型の影響を受けた臓器や 組織からの、神経系など、循環器系を介さない経路による脳への生理学的な 影響までは、否定できない」とのご指摘がありました。全くそのとおりで、 現在までの科学は、それを否定してはいません。そういう意味では、「あり 得ません」とは言い切れないということになります。 |
次に、血液学的常識。 血液型の分類法は、百数十種類あります。ABO式もRh式も、それぞれ、 その1種類に過ぎません。 百数十種類ある血液型を正確に分析すると、個人の識別が可能です。一卵性 双生児の識別だって可能です。 すなわち、仮に、地球上に60億の人間がいるとすれば、血液型も60億種 類あるのです。 60億種類もある血液型を、A,B,AB,Oのわずか4種類に分けて性格 について論ずるなんて、ナンセンスですよね。 |
最後に、心理学的常識。 人間というものは、暗示にかかりやすいのです。 血液型による性格診断を全く知らない人(血液型による性格診断を否定する 人ではありません)を集めて、例えば、A型の人に、一般にB型はこのような 性格であると言われていることを、A型の人の性格として説明してみると、大 半の人は「当たっている」と答えるのです。現在までに、心理学の分野で、こ のような実験は、数限りなく行なわれているのですが、おおむね、似たような 結果が得られます。 すなわち、A型の人は、一般にA型はこのような性格であると言われている ことを信じ、暗示にかかっているのです。 また、単純に、血液型とは無関係な性格診断を行ない、その結果を、ABO 式血液型別に分類してみると、常に、ABO式血液型と性格との間には相関は 存在しないという結果が出ます。 |
そんなわけで、ABO式血液型と性格との間には関係はないと言い切ってし まっても、問題はないでしょう。 |